2019年6月9日日曜日

『A-X-L/アクセル』感想

予告編 https://youtu.be/YO-MeyGi3hw

なんかもうね、ジャケットを見た瞬間に「おっ、そうだな。久々にこんな映画も見るか」って思える。
それぐらい、わかりやすくて、味のある、そういう映画。

……を期待していましたよええ。

謂わば『ターミネーター2』『ベイマックス』の系列。
 アニメならば『翠星のガルガンティア』

そんな展開のストーリーを。

さてさて実際に蓋を開けてみたら、やっぱりそういうお話。

そこに文句を言うつもりなんてない
「そうそうこれこれ、これを見たかったんだよ」という井之頭五郎ちゃんみたいな気持ちになるのを求めていた。

だからこそ、そういうオチを見たい人なら見ても良い映画だよ。とは言える。


…だが、微妙! 微妙なんだ……。


前述されたような映像作品を見たことのある人はきっとわかるはず。
既に面白味の確立されている、ロボットモノだからこそもたらせる感動の場面。

さてそこに至らせるためには当然、ストーリー含め、必要なものがたくさんある。

個人的にはこの作品において、足りていないのは3点。



○ロボットとしての、無骨さや危なっかしさ/愛嬌や愛着――というギャップ

ターミネーターのシュワちゃんは、
人型アンドロイド兵器として非常に怖い。ウィンチェスターを片手でぶっ放し大型バイクを駆る。片腕が千切れようとも表情筋一つ動かさない。
だが、「笑ってみろよ」と言われて笑えるだけのシュルレアリズムなジョークは、持ち合わせている。

ベイマックスは、むしろ逆の売り方で来た。
見た瞬間から愛嬌たっぷり、ロボットとは思えないモチふわ感。トコトコ可愛さに溢れて置きながら……。
戦闘用チップだけになった瞬間の、あの破壊力と怖さ。

……そういうギャップがあるから、その間で葛藤する様を見せられる。そこが良い。好き。


一方で『A-X-L/アクセル』は……
「ほら、犬っぽい見た目と、動きだ。可愛いだろ?」という感覚で作られたのが視える。

言っとくけどな! 剥き身のT-800って、フツーに怖ぇからな!
それの犬版みたいなデザインされても、縮尺さえもかなりデカいせいで、やっぱし、愛嬌を感じるまでには至らなかったかなぁと…。

すまん。そんなに可愛くねぇっす。


だがそれに関しては、もう一つアイデアを捻ればよかったはず……
具体的には『トランスフォーマー』のバンブルビーが、なぜあんなに可愛いか? という話。

あのデカい図体で、無邪気。気がつけばなんかやらかしちゃってる!
「んもーほっとけないんだからあの子ったらー」という、お母さん的な庇護欲を誘うキャラクターしているから、バンブルビーは可愛い。

一方でアクセルは、割りかしどころか、かなり従順。

せっかく犬みたいなデザインなんだから……
どこかの庭先のパピヨンに挑発されて、吠え返しちゃって「コラッやめろ!」と主人公に叩かれて「くぅ~ん」といじけるぐらいはやってほしかった。
そしてその吠える声が壮絶すぎて卒倒しちゃうパピヨンの飼い主お婆ちゃん、みたいなコメディ部分がないのが、ちょっとね、悲しいよね。

無邪気しているシーンは確かにある。あるんだけど……
「この場面は無邪気な側面をがっつり見せるから! 他では見せない!」とばかりな作り手の生真面目さが透けて見えるせいか、あんまし印象に残らない。

残らないから、そのT-800みたいな強面のインパクトのままで、ギャップを覚えるまでには至らなかった……。



○敵の存在

ターミネーターは、未来から送られてきた敵から、主人公を守るために戦った。
ベイマックスは、なんやかんやで真相にたどり着いてしまった。

さて「軍の兵器として開発されたモノが脱走した!」からスタートしたんだから、敵はわかる。

脱走した新開発の兵器を追いかける軍人たち! そして制作に携わった暗黒メガコーポの連中!

……が、カメラを搭載したドローンをふわ~っと飛ばして捜索っぽいことをする。

兄ちゃん兄ちゃん、僕ァ思うんだけど……ドローンを飛ばして捜索させるならさ、
そんな渡り鳥みたいな描写じゃなくて、至るところへ一つずつを蜘蛛の子を散らすようにブワーッとばら撒く方が、正しくないかい?

そして敵の連中は特に活躍しない。
主人公たちを感知しておきながら、後半までは、主人公を放置する理由だけを並べている。

特に活躍しないから、悪役として恨みを集めていない。
すると、敵と味方が衝突する瞬間になっても、鬱憤を溜め込ませていない。
カタルシスが生じない。オチにパワーが生まれない。
悲しいね。

一方で活躍をするのは、主人公の近くにいたいじめっ子……ここはちょっと感動した。
「そっか、いじめっ子が、いじめられっ子の飼っている犬へ攻撃するのは、むしろお約束だからな!」と。

問題は、その犬がめちゃくちゃ怖いデザインしていることだが。

いじめっ子がお約束通りやられてしまう。
だがその前段階から「いやちょっと待てお前。見た目もめっちゃ怖いし、怖い思いもしただろ? むしろお前勇敢だよ」という同情をしてしまうことにあるんだけど。

――ちなみにその直前のシーンは少しだけ可愛かった。



○脚本の粗

先述の通り、悪役がそんなに悪さをしていないのは、実は、理解するし、動けない事情があるのも納得できる。
その立場らしい振る舞いであるからこそだ。
それは中盤=第二幕のこと。

それより問題なのは序盤=第一幕。
登場キャラクター、舞台、主人公の葛藤=どんな問題を解決するのか……をバーッと並べることが重要。


だがその前段階に……『A-X-L/アクセル』の主人公は、
軍用ロボット犬アクセルなのか? それとも彼を見つけた青年なのか? というところに着眼しないといけない。

そうしないといけないからこの映画は微妙なんだと思うな。

青年の話にするならば…
・いじめられっ子的な冴えないポジション。
・世渡りもそんなに上手じゃない。
・だがオフロードバイクの腕ならいじめられっ子に勝てる……と思いきや、それを逆手に死にかける。

――いじめっ子への復讐、みたいな話に思えなくもないんだが、
青年は優しいのか流されやすいのか、そういう憎悪の描写を、この段階でしない。


ロボット犬アクセルの話にするならば…
・登場段階で、脱走中。
・青年を追い回してズタズタに損傷。

――なりゆきで治してもらうところはともかく、
その直前から既に青年を「信頼できる人物」にしてしまっていることが問題で。

なぜそういうことをしたのか? という動機は全く描かれない。
「だってそういうもんでしょ?」とばかりに。

そこが良くない。そこがないとなりゆきだけのモノになる。

理由があるから、行動がある。その結果を見て、理由が果たされたかどうかで、印象が変わる。
理由をすっ飛ばすと、結果を見せられても「わーよかったねー」で終わり、訴えかけるものがないことになる。

……どちらが主人公だったとしても、ちょっと宙ぶらりんな冒頭。


――以上3点。だからシマらない。

なんというか……お話の都合上「世間に見せないで如何にこのヘンテコ物体を隠すか!?」というスリリングさが必要だと思うんだけど、
それを大胆カットしたせいで、世間という存在が消えて、こじんまりした映画として収まってしまった、という印象。

でも好きなんだよこういうお話の映画は。だから愛を持って文句を言う。言った。